2012年の11月あたりに、ある分厚い本を購入しました。買ったならすぐに読めばいいものを、その膨大な情報量に、圧倒され、まとまった時間のあるときに読もうといままで引き伸ばしにしていました。一年以上経った今頃になって、ようやく読みだしたのですが、決して本を読む時間が一年以上取れなかったわけでもありません。
2013年始めに、この文のように2012年までの総括を書いたのですが、そこには次のように書かれていました。
“今年[2013年]は、数をこなすより、1作にきちんと完全投入できるようになりたいな、と。とりあえず完成させればいい、未完の傑作よりも、完成した駄作だ。そういう考えのもとこれまで書いてきたんですが、そろそろすてっぷあっぷします。完成させたうえで(主観的に)駄作を脱します。”(「
2013年」2013年1月2日記事)
しかしその考えをもとに2013年を過ごしてみて、失敗したな、と現在は思っています。
2012年に書いた長編作品が4作であるのに対し、2013年に書いた長編は「あむの憧憬」1作だけなのですが、ではこのただ1作に完全投入したのかといえば、答えはノーです。自分はこの作品を書き上げるのに半年以上の時間を費やしましたが、それはその期間ずっとこの作品と向き合っていたのではなく、ただ空白期間が多く含まれているだけでした。初稿は一気に、推敲はじっくり、というのが理想形だったのですが、初稿のほうにじっくり時間をかけてしまった印象です。しかもそれは、時間をかけて、ゆっくりと吟味しながら書きあげるのではなく、一気に書き上げることは書きあげて、他の時間はただなにもしなかったのです。
さらに悪いことに、その空白期間は一応「長編の執筆期間」であったのですから、自分はその間短編も書いていなかったのです。
てきすとぽいというサイトに出会ったことで、掌編はいくつか書けていたことは不幸中の幸いでしたが、とにかく2013年は書かなかった。停滞の年でした。
ただひとつ、長編では以上のとおり失敗しましたが、短編に限れば「完全投入」がある程度成功した部分もあります。
星新一賞に、ある方と共作で応募したのですが、その短編だけはじっくり時間をかけて推敲することができました。相手のプロットをもとに初稿を一気に書き上げ、それを相手に見てもらい、また書き直し、見てもらい、書き直し。
2013年に創作的な進歩があったとすれば、それくらいです。やはり推敲が曲者で、肝なのです。一気に書き殴った初稿であっても、手癖がある分、ある程度の評価は得られます。しかし無論のことそれは「ある程度」でしかなく。それに気づいたからこそ、2013年は“すてっぷあっぷ”するために推敲に時間をかけるはずでしたが……結果として一年のほとんどを無駄にしてしまったようです。
その打開策になるかはわかりませんが、とりあえず今年2014年からは、どんどん長編を書いていこうと思います。もう長編を書いていないときなんてないぜ、みたいなのを目指して。幸いにしてプロットのストックもありますから、とにかくたくさん長編を書いてやろうかと。
推敲はどうあれ、「初稿は一気に」というスタイルは変わりません。340枚の初稿を10日で書きあげたのが今のところ自己ベストなのですが(「妖精が創った人形」)、今年はその記録を更新できたらいいなぁ、とか。
なんだか推敲から逃避している気がしないでもないですが、まあ2013年の轍を踏むわけにはいきませんから、とりあえず別の方向から動いてみます。
それと、これは個人的な印象かもしれませんが、やけにSFが温かくなってきましたね。空想科学祭が閉幕したぐらいの時期には、ハヤカワSFコンテストがリニューアルオープンされ、そうかと思えば今度は星新一賞が新設され。2013年1月に、隔月で開催されているある競作企画に初めて参加したのですが、SF作品であるにも関わらず賞をいただいて、驚いた覚えがあります。「どうせSFは難解だとかなんとか言うんだろ」と少し卑屈に構えていた自分が恥ずかしくなりました。
そのこともあって、2013年は外に向けたSFを多めに書いていました。しかし個人的に、まだ違和感が拭えません。自分の書くSFはもっと内向性をもったほうがしっくりくるな、と。そのあたりの調整も含めて、今年はたくさん書いていくつもりです。
今年もよろしくお願いします。
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