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アンソロジー『おなかがすいて眠れぬ夜に』雑感集(1/3)

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[2/3](準備中)
[3/3](準備中)

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 小伏も参加しました飯テロ爆弾アンソロジー、『おなかがすいて眠れぬ夜に』が無事届きました! 1ページに1作品の掌編作品が載ったコンパクトなレイアウトで、読みやすさ満点のアンソロジー! 丸角加工まで施された優れものの爆弾です。
 あまりに素敵な出来、これは感想をしたためねばなりますまい。
 ということで各作品への個人的な雑感集です。
 ネタバレを含むので未読の方はご注意を!

 絶対これ書いてておなかすく。


○氷砂糖さま「焼肉食べ放題、税込一〇八〇円」
 なんだこのタイトルは。おなかがすくではないか!
 そしてそれを優に超えるほど本文が味覚を刺激してきました。焼肉を取り皿に取るところから始まり、熱せられた焼き網に肉が置かれた瞬間。肉を網から取り上げタレにつけた瞬間、白米に載せた瞬間! 手の動きが実にスムーズに描かれていて、これはもうお腹が空くより他ありませんでした。
 とにかくその情景を想起させる擬音表現が素晴らしい。これでもかというほど想像を幇助させます。鬼です。また「肉を取ってタレにワンバウンド、飯にバウンド、あむり。」という一文が特に好きでした。先ほども言ったように箸の流れがスムーズですし、「バウンド」という表現が軽快ですね。
 また、最後まで焼肉を食べる行動を描くことに従事しながら、最後の段落。このタイミングで主人公が焼肉を食べている背景を知り、共感を得るのです。ここまで描かれた焼肉は自分のことでももちろんありえるのだなと。自分も焼肉食べたいなと。
 焼肉という王道の素材も相まって、実にアンソロジーのさきがけを務めるに相応しい作品だったと思います。
 作者コメントに笑ってしまったのはここだけの話。
 ごちそうさまでした!


○西乃まりもさま「プライドオブ関西」
 関西の飯テロ魂。道頓堀のたこ焼き! 「本場の味」を演出するために、つい最近越してきた人の視点で描かれたのは堅実ながら上手いと思いました。前ページの氷砂糖さまの「焼肉食べ放題~」が食べる行為を徹底的に描いているのに対し、こちらは食べたときの人の反応で味を引き出そうとされている。このあたりの差異にそれぞれの書き味が出ているなぁと。
 火傷に注意。
 ごちそうさまでした!


○明巣さま「象徴」
 これ、すごく好きです。構成が上手い。
 一段落目ではフランスパンにトマトを載せたりチーズをかけて焼いたものを食べる描写。この描写自体も素晴らしいのですが、この作品はそれが肝ではないのですね。
 二段落目に入ると「君が作ってくれたものが一番美味しい。」君が作ってくれたバケットのピザトーストを、君と一緒に食べるのが一番好きなのだと主人公は言います。食べ物の描写もさることながら、「君と」いることが主人公の喜びなのであり、そして食べる行為がその象徴となっているのですね。
 食べ物に焦点を定めた一段落目から、主人公「僕」と「君」との愛の物語にフォーカスを変える。たった300文字程度の作品なのにカメラワークが流動的で、綺麗な構成でした。
 また、食べ物の選定もこの作品の上手いところだと思います。描かれているのは基本的にバケットに食材を載せてトーストで焼くだけの、お手軽な料理です。あまり作る人の腕前が影響しない食べ方だと思います。そういう、「君」が格別お料理上手な人だというノイズを持たせないようにすることで、「君」と食べるから美味しいんだ、と言う点を強調した。料理工程がほとんどない食べ物である分、作品の流れにまったく澱ませない。そのうえですごく美味しそう(笑)。とても上手い選出だなぁと。
 素敵な作品でした。ごちそうさまでした!


○綾桜さま「戦いの元はパステルカラー」
 人は争いを繰り返すんだなぁって。
 二行目から四行目にかけてが非常におなかを刺激しました。夏のお供をこうまで美味しそうに描くとは、脱帽です。そして色付きの麺を取ろうとすると起こってしまう戦争。ここまで含めて美味しい風景でした。
 ごちそうさまでした!


○望月あんさま「桃の体温」
 失礼ながら、ここまで来ると筆名を拝見するだけでもお腹が空いてしまうのでした……。こしあん派もつぶあん派も仲良くしよう。
 夏風邪を引いた主人公のために、剥いてもらった白桃。そのわずかなぬるさというのが、この作品の肝ですね。看病してもらう優しさを、「桃の体温」として食していく。面白い視点でした。
 ごちそうさまでした!


○遠藤ヒツジさま「咀嚼された世界」
 素晴らしい文体。特に最初の三行の流麗さには舌を巻きました。これでもかと美味しそうなワードが、読点を挟むことなくどっと流れるように舞い込んでくる。リズムも小刻みで読みやすく、ストレスを感じさせずに、ただただ食欲だけを刺激してくる。文章力の高さが垣間見えます。
 酒の勢いでどうでもいいことをつらつらと考える部分も読んでいて面白いです。混沌とした胃を世界と表現し神の話にまで持っていく。酒の席での哲学は実に笑えますね。
 終始一貫した酒文体。非常に読ませる文体でした。ごちそうさまでした!


○とりのささみさま「クロワッサン」
 失礼ながら、筆名を拝見するだけでもお腹が空いてしまうのでした……(二回目)。
 上手い食べ物は種さえも超える! クロワッサンの描写がもう……お腹が……。「表面の焦げた鎧に隠された小麦の甘味と適度な塩気が私を刺激していく。」という文が特に好きです。これ、実際に食べながらじゃないと書けんでしょ、と思いながら読んでいました。特に「適度な塩気」の部分とかですね。
「何という食い物なのだろうか」というラストから、タイトルを「クロワッサン」とつけるのは流れが綺麗です。
 ごちそうさまでした!


○トオノキョウジさま「春菊天そばと石油」
 一段落目と二段落目の落差が笑えますね。文字通り急に落としてくるので、不意打ちを食らいました。
 最初の春菊天そばのくだりは実に食欲を刺激します。具体的な値段と高田馬場という舞台も相まって、現実味あるどこか懐かしい雰囲気を醸し出していたと思えば、石油王。「とかぬかしやがって返せよ!」の落差ですね。
 ごちそうさまでした!


○堺屋皆人さま「或る貧乏学生の晩餐」
 初っ端からダッシュしていて良いテンションでした。珍しい食べ物を手に入れたときとか、確かにこんな感じかもしれません。
 中間の食べ物の描写パートもハイテンションなまま進行されるので、より一層主人公の興奮が伝わってきておなかがすきました。その描写自体も、香り→見た目→味覚と段階的に書かれていて、ハイテンションでありながらも計算されて書かれているようでした。
 オチも決まってて良い。
 ごちそうさまでした!


○青銭兵六さま「ご飯が炊けたよ」
 一文ごとに改行された文体が、視覚的にも美しさを感じます。特に最後の〈ごちそうさま、否、お終い〉が下揃えになっているので、レイアウトにメリハリがありますよね。レイアウトが素晴らしいこのアンソロジーの中でも、特に綺麗な1ページだと思います。見た目がポエムのようなので、何度も読み返すことに掌編作品の中でも特に秀でてストレスを感じさせません。
 肝腎の内容もまた、素晴らしい! おなかがすく! この作品でひとつめのカテゴリ『たっぷりがっつりたべたいときに』収録作は最後となるのですが、王道の焼肉で始まったカテゴリだけに、ラストも王道! その名も焼きたてご飯! この辺りは作者様というより主催者様の手腕なのでしょうが、素晴らしい構成です。
 ご飯の炊き方にもこだわりが感じられます。なにせ「小さな土鍋」なのですから! 極上のご飯を提供してやろうという作者の意地悪な顔が浮かびます。昨今炊飯器でこと足らせてしまうところを、土鍋! 土鍋ですよ皆さん! 蓋を開けたときの薫りは普通のものではないでしょう。「宝石にも優る」とはまさに言い得た表現です。
「胃袋を締め上げ」る味への期待の中で、「しゃもじを入れ割ると、一層の薫りが鼻腔をつく」。ここも素晴らしい。日常的に嗅いでいるにおいであるだけに、その一層格別なにおいが容易に想像でき、おなかがすくわけです。これには「頬が緩む」より他ありません。
 そして茶碗に盛られた白米は、おかずもなしに口へと運ばれます。簡潔な描写が一層に想像を掻き立てます。そこに加えて漬物と唐辛子味噌。箸の手はとまらず、最後の一文のように、どんどん食材を費やしていくわけです。
 主役は単なるお米だというのに、これほどまでに贅沢な食事もそうそうありません。王道の風格をこれまでもかと注ぎ込んだ、素晴らしい作品でした。
 ごちそうさまでした!


○マンノンさま「謎の料理ブルブル」
 タイトル→「ブルブル?」→「じゃなくてブルグル」の流れが少し好きです。タイトルを「ブルグル」ではなく「ブルブル」にされたあたり、読者の目の動きが把握されているような感覚。
 ブルグルというものを初めて知りましたが、試してみたくなりました。片付けをしつつも、弟の料理に期待しているお姉さんが愛らしいですね。
 ブルグルを画像検索してさらにおなかがすくオプション付き。
 ごちそうさまでした!


○まるた曜子さま「週1の儀式」
 下拵えを読んでいるだけなのに、なんだこの空腹感は……。二段落にわたって繰り広げられた下拵えの下拵えが、最後の段落で一気に味覚をもって迎え撃ってきました。「根菜果菜菜物に少々のお肉。味替え実験調味料」この部分の怒涛さが恐ろしい。
 短いですがこれにて。ごちそうさまでした! いやむしろいただきます!


○柚香さま「太陽のお茶」
 筆名が……(三回目)。
 これまでの作品とは一転、敬体の文章で綴られ、世界観も独特ですね。お茶を差し出すおばあさんはまるで魔女のようです。不思議な世界観のなかで繰り広げられる、「サン・ティー」の作り方。作者コメントによると実際に作れるそうなので、試してみたいです。太陽の味を味わってみたい。
 そしてこの世界観を如実に表しているのが、「6月の子供」。梅雨が明けて太陽が雲から顔を出したような時の流れが、食卓で短い時間で進行されていく世界観。魔法を感じます。
 ごちそうさまでした!


○服部匠さま「カラメル・ノックは誰を呼ぶのか」
 わーいお菓子つくりだ! それもプリンだプリン! と(主に胃が)大はしゃぎになりながら読ませていただきました。本格的な作り方に大興奮です。ぜひ食べてみたいですね。
 そして主人公がプリンを作っている背景には、菓子職人の友人の面影が。料理工程の叙述もさることながら、人物関係のエッセンスが味を引き立てていました。
 ごちそうさまでした!


○せらひかりさま「おやつの時間」
 こんな先生のいる学校に通いたかった……。「頼まれたので」とさらっと軽い動機でクッキーを焼いているのが、印象的でした。日常的にお菓子つくりをしているんだなぁという感じを受けます。
 先ほども申し上げたように、学校という舞台が良いですね。調理室も充実しており生徒たちの喧騒も聞こえ。作者様も仰っているように牧歌的な雰囲気がありました。
 しかもクッキーを焼いている傍では既にケーキが焼き上がりそう。おやつのパンチが激しいです。
 ごちそうさまでした!


○水城翼さま「元気を出してほしいから」
 兄の台詞が好きです。疲れたときは甘いものに限りますよね。琥珀色の紅茶に牛乳が入って不透明になる流れ、良いですね。蜂蜜で甘さを整えたりと、「楽なんだもの」と言っている割には兄のために手間暇かけているなぁと。タイトルの通りですね。兄想いの妹さんです。
「茶葉が容器にぶつかってチリチリと鳴る」という表現がお気に入りです。
 ごちそうさまでした!



2/3に続きます。

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