※以下、『最終兵器彼女』のネタバレを含みます。充分にご注意ください。
セカイ系、というジャンルがある。ゼロ年代の台頭、個のなかに世界を見出した逃避のテクスト郡である――。
その代名詞とも呼べる作品が、漫画『最終兵器彼女』なのであるが、この作品でえがかれるのは徹底して
シュウジと
ちせならびにその周囲の「人間」であり、国の対立、戦争、というものは、語られない。結局なにと戦っていたんや……。というのはおそらくほとんどの方がいだかれた感想だろう。
えがかれているのは結局のところ恋愛物語に帰結されるのだから、そしてそれこそがセカイ系といわれる所以なのであるから、舞台背景について言及するのは野暮というものだ。しかし野暮なのを承知で、戦争の相手はなんだったのか、という疑問について言及するならば、個人的には答えが出ている。それは、
地球そのものではないか。
実を言うと地球はもうだめです。
突然こんなこと言ってごめんね。
でも本当です。
ちせが偶然に戦争に巻き込まれ、人間たちが死に絶えていくなか、地球もまた大きな変動を遂げている。それはちせたちの境遇とは違い、偶然とは思えない。作中にも、ガイア説を思わせる叙述が含まれている(たしか最終巻あたりに。確認し次第具体的にどこであるか書き加えておきます)。
そしてこれは発想の飛躍になるが(作品の範疇から逸脱し、個人の主観として作品を“娯読”することになるが――)「人間」もまた「地球」の一部に他ならないのであるから、地球がおのれを治癒するのであれば、「人間」が動き出すのもまた道理。地球の意思によって、人間は戦争をおこし、そして滅びたのではないか――地球の治癒作用によって。
……まあ、なんにせよ良いSFですよね。そして良い恋愛。
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