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去年2016年の10月28日から数日間にかけて、Twitterで実施した書籍レビュー企画、「#読書週間だからRTといいねの数だけ好きな本を紹介しよう」。Twitterの海に流しておくままなのももったいないので、このとき投稿したレビューをここに転載します。
すべて1ツイート(140文字)以内でまとめているので短いです。ネタバレには配慮しているつもり。
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Robin Williams「ノンデザイナーズ・デザインブック」
デザイナーではない人のためのデザイン指南書。つまり素人のための入門書。デザインの4つの基本原則が紹介されている。基本的なことなのに、これを読むまでその基本的な視点を持っていなかった。例も多くてわかりやすい。
橋元淳一郎「0と1から意識は生まれるか――意識・時間・実在をめぐるハッシー式思考実験」(ハヤカワ文庫NF)
宣伝文句に「極上科学漫才」と書かれている通り、面白くわかりやすい。葉緑体人間や人工生命の自己意識、時間と空間の実在についてなどの思考実験。創作的刺激に満ちた一冊。
保坂和志「書きあぐねている人のための小説入門」(中公文庫)
入門といっても、既に何作も創作している人が行き詰まった時に「小説」に立ち返るために読む本かなと思う。読んだときはいろいろと救われた。また読み返すだろうなと思う。
アイザック・アシモフ「生命と非生命のあいだ」(ハヤカワ文庫NF)
アシモフの科学エッセイ。生命と非生命の境界線を論じる話は第一部のみで、天体や未来予想、ひいてはSF論についてなどユーモラスに話を発展させている。すごい内容量で、これ一冊でお腹一杯になること請け合い。
ここからは小説の紹介。
フランク・シェッツィング「深海のYrr」(ハヤカワ文庫NV)
おだやかな前半から、後半へと急加速する怒涛の展開に舌を巻く。海流や生態など背景がとにかく緻密で、作品世界にのめり込まれる。そのぶん科学的蘊蓄が多量に盛り込まれていて、その手の叙述も楽しめる方にとてもおすすめ。
A. ベリャーエフ「ドウエル教授の首」(創元SF文庫)
言わずと知れた名作古典SF。だけどもこれを紹介せずにはいられない。 アクションありロマンスありとエンタメしているソ連SF。なんといっても首だけとなった人間とのやり取りが印象的。初めて読んだときは終わり方に驚いた。
小川一水「老ヴォールの惑星」(ハヤカワ文庫JA)
限られた水と食糧で迷宮に閉じ込められた人々の極限のやり取りを描いた「ギャルナフカの迷宮」、海ばかりの星に取り残された「漂った男」など、良作揃いの短編集。ある木星型惑星に棲む生命体を描いた表題作が、非常に有機的で特に好み。
クリストファー・プリースト「魔法」(ハヤカワ文庫FT)
いつの間にか術中に嵌っている。記憶喪失のグレイが、失った期間のスーザンとのラブロマンスを取り戻していく話……かと思いきや、最後の最後で恐ろしく緻密な構造が明らかになる。この驚きはそう得られるものではない。おすすめ。
六冬和生「みずは無間」(早川書房)
探査機のAIに転写された男の自我が、恋人みずはとの記憶に苛まれながら果てしない宇宙探査を続ける話。探査機が宇宙を放浪するという内容をここまで面白く、そして恐ろしく書けるとは。意欲作。※文庫版も出てます。
円山まどか「自殺者の森」(講談社BOX)
自殺した人間は地獄で木の姿となり植えられる。自殺者の森を管理する少女と、自殺する運命にあるという人々との物語。自殺という題材を扱いながら、恋愛色高めで外に開いた内容になっているのがすごい。文体も好み。
ジェイムズ・バイロン・ハギンズ「凶獣リヴァイアサン」(創元SF文庫)
生物兵器の申し子ミリタリーモンスターパニックSF。とにかく熱い。これでもかというほど熱い。特に斧で対戦する大男トールの場面は白眉。
山本弘「名被害者・一条(仮名)の事件簿」(講談社ノベルス)
ホームズのような名探偵もルパンのような名犯人も巷には溢れている、では名被害者は? という発想の勝利。だけに留まらず、内容もコメディ要素満載。パロディネタが好きな方におすすめ。
伴名練「少女禁区」(角川ホラー文庫)
心温まるホラー。異色な恋愛小説と見たほうが近いかもしれない。併録「Chocolate blood, biscuit hearts.」は自分のリアルタイムの行動をさながら今話題のVRのような形で配信できる世界で、姉弟の悲劇を描いている。
滝川廉治「テルミー」(集英社スーパーダッシュ文庫)
物語が始まったときには既に、高校生26名がバス事故により命を落としている。事故の唯一の生存者、鬼塚輝美は、彼らの魂をその身に背負い一人一人の「やり残したこと」を果たすために動き出した。繊細で綺麗な作品。
続き待っています。
かじいたかし「僕の妹は漢字が読める」(HJ文庫)
漢字が廃れたという想定で近未来を描いたSF。読書家な「妹」は漢字を含んだ昔の文学作品を好んで読んでいるが、主人公はそんなものより現代の正統な文学を読めという。その高尚な文体は必見。良く書けたなぁと感服。
エイミー・ベンダー「燃えるスカートの少女」(角川文庫)
喪失感を下敷きにした、突飛なテーマをかき集めた短編集。祖母を母親が産む話、唇だけ失って戦場から帰ってくる夫の話、父親を亡くした日に何人もの男と肉体関係を持つ図書館員の話など。突飛なのになぜかとてもお洒落。訳文が巧い。
三島由紀夫「美しい星」(新潮文庫)
三島由紀夫のSF小説。「円盤」の目撃に捕らわれた一家の話。三島由紀夫といえばその圧倒的な文章力だが、無機質な視点を意識されたのか、他の作品にある至上の美しさは抑えられている印象。そのうえで表されたこの神秘性が好き。
司馬遼太郎「大坂侍」(講談社文庫)
短編集。兄の仇を討つために大坂に来た侍を、仇討ちなんぞ金にならんと言い聞かせ金で解決しようとする「難波村の仇討ち」など。大坂を舞台にしているからこそのユーモア。ときにブラック。
桜庭一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」(角川文庫)
冒頭で結末が明かされる。その結末に向かって進行される本編。結末を既に知らされているからこそ、胸が痛む。読んでいる間何度も1ページ目を読み返し、その都度結末に項垂れる。「おとうさんにしか殴られたことないんだから!」
清水義範「私は作中の人物である」(講談社文庫)
短編集。文才がすごい。柳瀬尚紀訳版「フィネガンズ・ウェイク」のパスティーシュ「船が洲を上へ行く」には特に舌を巻いた。誤字という表現技法。笑えるのでぜひ。
アルフレッド・ベスター「虎よ、虎よ!」(ハヤカワ文庫SF)
自分が読んできた中では、これ以上に“盛り上がる”作品を他に知らない。嵐のように収束される展開は必見。今回ベリャーエフ以外の古典SFは紹介しないつもりだったけど、これを読まないのは、あまりにもったいない。
ダレン・シャン「ダレン・シャン」
吸血鬼になってしまった少年の物語。児童文学とは思えないほど、生と死をシビアに描き切った傑作。登場人物の扱い方、話の畳み方に至るまで、完成度が非常に高い。
北野勇作「かめくん」(河出文庫)
大好きです。
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以上です。
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